渚便り【完】
「そーいや今日林ちゃんとさっくんは?」


特にこれといった話題もふれず、ただ潮風に揺られながらぼんやりと海を見据えていたら伊波が口を開いた。

伊波の中で俺はあの二人と常に一緒にいるイメージが定着しているようだ。
実際クラスの面々からはサッカートリオと呼ばれセット扱いされている。
更に補足すると、細身に長身な二人に対し、前ならえでは腰に手を当てたことしかないほどに身長の低い俺、で構成されていることから、捕まった宇宙人の図とか呼ばれることもあった。
ほら、あのほっそりとした宇宙人が、ロングジャケットを着た二人の男にサイドから手を掴まれている有名な写真があるだろ。アレが由来だ。

断じていじめられているわけではなく、寧ろネタにされている感じではあったが、身長をコンプレックスとしている俺としては悔しくてならなかった。
今に見てろ。中学を卒業する頃には二人とも追い越してやるからな。


「一緒じゃないの?」
「あー、いやなんか、寝坊したとかで……」


素直になれないが為にまた嘘をついてしまったことに罪悪感を抱く。
それと同時に伊波に名前を呼ばれた二人に嫉妬の念を向けた。
やっぱり伊波は無口でシャイな俺なんかよりあの二人の方が接しやすくて好きなのだろう。
きっと今だって二人がいないことに内心残念だと感じているはずだ。
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