渚便り【完】
「つーかなんでりゅーやは泳がないのさー」
「せっかく沖縄に来たっていうのに勿体ないぞ」


彼女の言葉を適当に流し一向に立ち上がる様子のない俺を見かねたのか、林崎と作田がやってきて促すような発言をしてきた。

……沖縄、か。
その地名にはどうも敏感な反応を示してしまう。
そうか、だからこんなに憂鬱なんだ。

アイツを彷彿させる場所にいることが、俺をこんな塞ぎ込んだ気持ちにさせているのかもしれない。
三年前の記憶を思い返しながら一人納得がいった。忘れていたわけじゃない。寧ろ忘れられないからこそ、あえて考えないようにしていたくらいだ。
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