渚便り【完】
「俺もう食べ終わったから先に部屋戻るわ」


入れ替わるようにして席を立つなりそう告げれば、怪訝そうな顔をした二人だったが、見なかったふりをしてテーブルの上に置いていた部屋の鍵を手にした。
レストランを出て高級感漂うホテルの廊下を一人で歩く。

エレベーターに乗る際すれ違った、寝坊組のクラスメイトが朝食にオレンジジュースがあったかどうか訊いてきたから、「あったかもなー」と脱力気味な返事をしておいた。
なんでだろう、伊波に会うのは物凄く楽しみなはずなのに、どうも気分が優れないのは。
さっき見た彼女の難しい笑顔が脳裏にチラつく。

自分がこんなに最低な男になる日がくるなんて、あの頃の俺は思ってもいなかっただろうな。
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