渚便り【完】
しばらくして目的地に到着し、車を降りた伊波に続いて俺も新垣さんに頭を下げる。
発車したワゴン車の後ろ姿を見送って視線を移動させると、台風対策を施しているであろう沖縄特有の造りが窺える一軒家があった。

ここが伊波の家だという。実は伊波は今日は登校日らしく(そういえば月曜日か)、人目のつく場所をうろつくのは違いにリスクが高いということで、自宅でマッタリ過ごすことを提案してきたのだ。
平然とサボりをしてまで俺といることを選んでくれたのか、と自惚れそうになる。
両親は仕事に出ているらしい。素朴な家具が置かれた家の中は静まり返っていた。


「沖縄あっついでしょ~」


そう言いながら冷蔵庫から伊波が取り出したのはポッキンアイス。
リフティングでボールを蹴る時のように、膝を使って真っ二つに折った片方を伊波から受け取り、相変わらず昔のお菓子が好きなんだなと笑ってしまった。
涼しげな色をしたアイスを口の中に運ぶと、心地良い冷たさがこめかみの辺りをキーンと刺激した。
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