勇者がうちにやってきた▼【完】
「ええっ、どうしてこんなところに犬がいるの!?」


という店員の声と、


「もしかしてぇ、親分くんったらアタイを追ってきたのぉ?」


というちよこさんの声が耳に入り、私ははっとした。
今は怒っている場合じゃない。彼も異世界からやってきたわけだから、警察につきつけたら、かえって面倒なことになりかねないのだ。
ここは速やかにひと気のない場所に避難するべきだろう。


「すみません店員さん。また改めて来ますので。この下着一度預かっててもらえますか?ほら、ちよこさんも行こう」


素早く身なりを整えて店を後にする。

一足先に店を出ていた男はなぜかハスキー犬を引き連れて、あーくんとマオちゃんと姫と話しているようだった。
ただでさえ男が上半身肌かなせいで目立つのに、明らかに盲導犬のオーラが出ていない犬がいたら周囲からの注目も浴びるのは当然。
パフォーマーだと勘違いしている人もいるようだ。


「みんな、とにかく外に出よう!」


私達は小走りで外へ向かうことにした。
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