勇者がうちにやってきた▼【完】
店員さんが外からカーテンを開けたことにより、微々たる風に乗って煙が逃げていく。
俯いていた顔を上げて目に映ったものに、私はカッと目を見開いた。


「うっひょー、良いパイオツはっけーん」


ツンツンの髪の毛に、色黒顔には眼帯がしてあって、なぜか上半身裸ときた。
数秒に渡る沈黙を挟んだのち、一昔前のギャル男みたいなその男の顔面に、私は無言で拳をぶち込んでいた。


「アウーチッ!どこのレディか知らねーけどマジサーセンって!オレにも状況がわからねぇんだよー」


顔面を押さえながら頭を下げたり弁解したり忙しい男め。

今110番してやるから待ってなさい。
怒りに満ちた私が鞄のなかにある携帯へ手を伸ばそうとした時だ。
< 107 / 381 >

この作品をシェア

pagetop