勇者がうちにやってきた▼【完】
「ここのケーキ本当に美味しくてね。うちの子がすごく気に入っているのよ〜。職人さん達にもお礼を伝えておいてくださいな」
「ありがとうございます。今回もお子さん喜んでくれると良いですね」


お金持ちそうな貴婦人に笑いかけながら、ラッピングされたケーキの箱を渡す。
なんでも娘さんの誕生日ケーキをオーダーしてくれたらしい。
渡す前に中身を確認してもらうために開けたけど、すごく手の込んだ作品だった。
パティシエさん頑張ったんだろうな。そしてこんな素敵なケーキをもらえる娘さんが羨ましい。きっと親から愛されてるんだろうなぁ。


「ありがとうございました!またお越しくださいませ」


ぺこりとお辞儀をして、にこやかにお客さんの後姿を見送る。
バイトを初めてから早くもひと月が経過しようとしていた。
ひと月も経てば流石に色々慣れてくるもので。最初は着替える度に恥ずかしいとすら感じていた可愛すぎる制服も、なんの抵抗もなく着るようになっているし。レジの管理から接客まで仕事内容もほとんど覚え、一人で表の店番を任されることも増えたし。小さかった接客時の声も今ではハキハキとしていて、私がバイトを始めたことはとてもプラスになっていた。
人って変わろうと思えば変われるものなのだと実感させられる。
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