勇者がうちにやってきた▼【完】
ちなみに、ひと月経過したものの、家の状況に変わりはない。
クエストクリアで元の世界に戻されることもなく、みんなそれぞれの生活を楽しんでいるようだった。
メルヘンチックな鳩時計を確認すれば、もうすぐ閉店の時間、つまり私のお仕事終了の時間を示していた。

そろそろレジ閉めの準備しとこうかな。
そう思ってレジのなかのお金を整理していた時だ。
来客を知らせるドアについたベルが鳴ったかと思いきや、そこにいた人物に目を丸くしてしまう。


「お疲れさまです」
「え、あーくん、なんでここに?」
「そろそろ終わる時間かと思って迎えにきてあげたんですよ」


ゆるく口角をあげて笑うあーくん。
実は以前みんなが私の仕事っぷりを見に来てくれたことはあったのだけれど、こんな風にあーくんが一人で来るなんて初めてだ。

わざわざ迎えに来てくれるって、なんか恋人みたいじゃないか。
しかしそんなときめきも束の間、近づいてきたあーくんのある異変を察知してしまう。
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