勇者がうちにやってきた▼【完】
「……煙草臭い」
「あ、わかります?」
「さてはまたパチスロに行ったな」
「いやー、今日は勝てると思ったんですけどね。数箱出て調子に乗ってたら、全部飲まれちゃいました。完全に引き時を誤りましたね。これ余り玉でもらった飴ですけどいりますか?」
「いらねーよ」


即座に突っぱねる。
つまり、だ。わざわざ迎えに来てくれたわけではなく、近くのパチスロ屋に行っていた帰りに寄っただけで。
所詮はついでというわけだ。
それどころか、


「それでですね、実は帰りの電車賃まで使ってしまいまして」
「帰れ。いますぐ帰れ」
「いやだから帰ろうにも電車賃が」
「歩いて帰れ」
「殺生な」


何が殺生な、だ!酷いのはどっちだよ!
迎えに来てあげたなんて嘘をついて、本当は自分が助けてほしいだけじゃないか。
一瞬でもときめいた私が馬鹿だった!私のときめきを返せこの野郎!
三次元ごときにときめいた私も悪いけどさ!

あーくんのゲスさにはつくづく呆れてしまう。
バイトで稼いだお金も、パチスロ、競馬、宝くじ等に使ってばかりいるみたいだし。
ちよこさんなんて生活費として使ってと納めてくれてるのにさ。
まったく、少しは見習ってほしいもんだ。
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