勇者がうちにやってきた▼【完】
「目玉焼きにソースだなんて邪道なのだ!ここは安定安心の醤油が一番なのだ!」
「じゃあアンタは醤油で食べてりゃ良いでしょうよ。なぜ僕にまでそれを押し付けてくるのですか」
「んふふ~、やっぱり目玉焼きにはチョコソースだよねぇ」
「魔導師貴様!ワガハイが作ったご飯になんてことをするのだ!」
「え~、美味しいよぉ?魔王くんも食べる?」
「いや、ワガハイは遠慮しておくのだ……」
「勇者くんは?勇者たるもの冒険も必要でしょぉ?」
「結構です無理ですゲテモノで味覚の冒険とか勘弁して下さい」


朝からあーくんとマオちゃんとちよこさんが、目玉焼きの上に何をかけるかで談議しているなか、さっさと朝食を食べ終わった私は食卓を立つ。

夏休みが明け、今日からまた面倒な学校が始まる。
だけど、ひとつだけ楽しみなことがある。
一緒に海に行ったぶりに、近藤に会えることだ。

あの海での出来事をきっかけに私は近藤を異性として意識しはじめた。
好きかどうかと訊かれたら、限りなくイエス寄りのノーと答えるくらいには。
アスパラ以上ブロッコリー以下と答えるくらいには好き、かもしれない。
ちょっと何を言っているのか分からないかもしれないが、要するに私はヤツのことが気になるのだ。
所謂乙女心的なアレだ。
今までは気にかけもしなかった前髪を整えて、昨夜は顔に慣れないパックなんかしちゃったりして。
かつてないほどに身なりに気を配りつつ登校する。
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