勇者がうちにやってきた▼【完】
「しかし、まさか姫が来ていたなんて思いもしなかったのだ」


マオちゃんの言葉に私とあーくんが頷く。
姫はあの時ちよこさんがゴミ箱に捨てたチケットを取っておいてくれたのだ。
あんなことを言っておきながら、やっぱりちよこさんのことを気に掛けていたなんて、姫には是非ロイヤルツンデレの称号を授けたい。


「ブローチ、もう使えないなぁ……」


ちよこさんがポケットから出した袋のなかには、欠けたり折れたりでバラバラになったブローチの残骸。
試合につけたいと提案された時に危惧していた通り、案の定この有様だ。

小さい時からずっとお守りとして持ち歩いていたものだけに、思い入れも強いのだろう。
しゅんとしているちよこさんから、その袋を取り上げたのは姫だ。


「まだこんな懐かしいものを持っていましたのね」
「うん……大切なお守りだからねぇ。でも壊されちゃったぁ」
「仕方ありませんわね。また新しいものを買って差し上げますわ」


わたくしだって一応収入も得られてますし。
そう付け足した姫は得意げな様子だった。
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