勇者がうちにやってきた▼【完】
「嫌われてるってことは無いと思うけど、正直相手にもされてないよね」
「マジかよ、ありえんてぃー」
「親分が不真面目だからでしょ。真剣さがちよこさんに伝わってないから、ちよこさんも適当にあしらってるんだと思うけど」
「本気と書いてマジと読むくらいにはめっちゃ好きなのに!?」
「だからそれがちよこさんには理解されてないんじゃないの?」
「はあ……つらお」


くるくるとフォークを回し納豆パスタを巻きつけながら意見すれば、親分は深い溜め息を吐いていた。
そりゃ日頃あれだけチャラチャラしていれば、言動のひとつひとつが軽くて無責任なものに聞こえてしまうのも無理はない。

ホストという仕事で他の女性との交流も多いなか、本命は一人だけと言われても信憑性に欠けるというか。
親分だから平気になったわけであり、本来私は親分のようなノリの人間は苦手だから、尚更そういう偏見を抱いてしまう。


「だいたい本気って言いますけど、どのくらい本気なんですか」


パスタを平らげたあーくんが、口元をティッシュでぬぐいながら訊ねた。
確かに、口だけならなんとでも言える。
こういうのは誠意を行動で示さないと。
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