勇者がうちにやってきた▼【完】
二度あることは三度ある。この状況を前に、私はその言葉の真意を噛み締めていた。
こうもパターン化されては動じることもなくなる。
悲しきかな、マンネリ化とはこういうことなのだろう。

勇者、魔王とくれば、お次はきっと――、


「見つけましたわよ魔王!」


薄くなっていく煙の向こうからソプラノボイスが耳に届く。この口調、予感的中といったところか。
明白になったその人物に、半ば呆れてしまう。
くるくるの華麗な巻き髪にふわふわのボリューミーなドレス、頭に乗ったきらきら輝く冠が決定打だ。


「ぬあああっ!?なぜ姫がここにいるのだ!?」


しりもちをついている魔王の叫びに確信を得る。
やはり姫がきたか。
可愛いような美しいような、とにかく抜群のルックスを持つ姫は、瞬きで長いまつげを何度か上下させたあと、カツカツとヒールの音を鳴らしながら魔王の方へ近付いていった。
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