温もりが思い出に変わる頃【完】
こんな状況で何を抜かしているんだという感じではあるけど、今の私にはこれこそ最良の選択に思えてきてしまった。
思わず大きな声を上げてしまった私は、慌てて言葉を付け加える。


「あ、だってほら、ここそういうお店ですし?須藤さんは高いお金を支払っているわけですから!やることやらないと勿体ないというか!ゴムつければ平気ですって!大丈夫です、絶対に他言したりしませんから!私の方から誘ったんですしね!それにもし死んじゃうなら最期に良い思い出くらいほしいじゃないですか!」
「…………」
「……あー、あの、なんか、ごめんなさい」
「いや」


勢いで口走ってしまったものの、返答に困っている須藤さんを見て我に返る。
今の、がっついているみたいで引かれちゃったかもしれない。
だけどもう二度と会えないかもしれないという焦りが私の言動に拍車をかけたのだ。

あまりにも自分が惨めすぎて、目の奥からじわりと涙が滲んでくる。
すると突然須藤さんが私の震えた肩に手を置いてきた。心臓が跳ねる。
< 15 / 24 >

この作品をシェア

pagetop