温もりが思い出に変わる頃【完】
「奈々美さん、だよね」
「……それ源氏名です。本名は光里(ひかり)です」


本名で呼ばれたくて、更に欲を出してしまった。
須藤さんは一定のトーンを保ったままの声で続ける。


「詳しい事情は分からないが……その、もっと自分を大事にした方がいい。しかしそう言っても君は納得してくれないのだろうね」
「え……」
「まったく、僕としたことがこのような形で道徳に背いてしまうことになるとは」
「じゃあシてくれるんですか?」
「君がそれを望んでいるように見えるからね。それに、」


僕も満更でもない。そう付け足した須藤さんの手が、ゆっくりと私の下半身に伸びてきた。
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