温もりが思い出に変わる頃【完】
現実はそう甘くないと思い知らされた専門学校生活。
気が付いたら私は才能を開花させることもなく、落ち零れのまま卒業に至り、当然希望の仕事にも就けず、結局授業料に費やした借金だけが残った。
私の理想通りにことが運んでいれば、卒業後はセリフが一行しかない役だとしてもデビューしていたはずなんだ。
それなのに待っていたのは途方もない大金の返済を急かされるだけの日々。

一方両親は私が高校の頃離婚した挙句、挫折した私に愛想を尽かしたのか蒸発してしまった。
不仲な両親だったので、子供は私一人だけ。親の体裁が悪かったのが災いし、頼れる兄弟も親族もロクにいない。
元々役者の道を反対されていたから、ぞんざいに扱われてしまうのは仕方のないことなのかもしれない。

わかっていた。失敗すればもう相手にしてもらえないことなんて。
だけど専門学校に進学しただけで浮かれていたあの頃の私は、失敗するなんて微塵も思っていなかったんだ。
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