【完】黒薔薇の渇愛






小学生の頃、クラスでいじめが起きた。


男子三人が女子一人相手に、嫌がらせをしているところを、教室に忘れ物を取りに来た俺は目撃した。



「やめて……やめてよ!」と言う女子は、地毛が茶色で、黒色じゃない物珍しさからいじめの対象になってたと、今思えば分かる。



「こいつ染めてやんのー」


「茶髪とかヤンキーじゃん」


「黒色じゃないと先生ダメだって言ってたぞ~、なんでお前だけ許されてんだよ」



髪を引っ張られて、笑われて。


それなのにそいつは抵抗することなく、教室に入ってきた俺を見て、視線だけで『助けて』と乞う。



えー、めんどくさい。


そう口パクで告げて、忘れ物を取って俺は呆気なく教室から出る。



そのあと駆けつけた先生が、その子を助けたけど
なぜか俺まで怒られた。


その子は多分、助けてくれなかった俺も、いじめの対象として告げ口したんだろう。



……ほんっとめんどくさいよね。


別に俺、何も悪いことしてないのに。



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