【完】黒薔薇の渇愛




「地味だからって、男を満足させられないと思ってんの?」


グイッとセーラー服の(えり)を引っ張って、昨日桜木に噛まれた首筋の痕を見せる。



「これ、昨日桜木につけられたの。」


「……」


「それに、私知ってるよ。
 昨日岡本奏子が倉庫で逢美の連中に連れていかれたこと。
 岡本が女売って稼いだお金、ぜんぶ回収されたことも」

  
「……」


「それにしても。売った女の中に桔梗のお姉さんも混じってたなんて……火炎も災難だったね。」


「テメェ……どこまで知ってやがる」


「んー……大体のことは?
 だって"彼の女"なら当然でしょ?」



よく、こんなポンポンと言葉が出てくるよね。


正直自分でも驚いてる。



「さーっさと桔梗に謝って、許してもらえば?
 土下座して、ね?」


わざと煽るような事を言って、彼らの怒りの引き出しを開けさせる。


そしたら……。


「テメェ……舐めてんじゃねぇぞ。
 敵の女がひとりでノコノコと現れやがって。
 ……覚悟はできてんだろうなァ?」



ーーほら、簡単にかかってくれた。



人質にさえなれば、嫌でも桜木の元に連れていかれるに決まってるから。



桜木は私を使って、奏子を誘きだそうとしたんだから。

私も桜木を使わせてもらうね。


おあいこって事で……許してもらえるかは分かんないけど。



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