【完】黒薔薇の渇愛





「おら、ついてこい」


スキンヘッド男に手首を掴まれ、バイクに乗せられそうになる。


だけどここでノコノコついていったら不自然だ。


「……私があなたたちの言うことを聞くとでも?」


「言うこと聞かなきゃ、ここで押っ始めてもいいんだぜ?」


「……っ!?」


分かりやすく、できるだけ表情にださないと。


怖いのは本音、演技なんかじゃない。


その恐怖心さえ利用して、スキンヘッド男の思うツボにさえなれば。


「今からお前は人質だ。
 愛しの桜木に会わせてやるよ」



ほらね、思い通り。


桜木と奏子の居場所なんか知らない。


知ってるこの人たちの力が必要なの。


だから……。



「……こんなことして、桔梗が黙ってないんだから」


「さすがの冷酷なあの男でも、自分の女人質にされちゃあ焦るだろ」


「……」


「飛んで火に入る夏の虫ってね。
 バカはどっちだよ、バカ女」



勝ち誇った様に、男がバイクの後ろに強制的に私を乗せる。


嘘ついてごめんなさい。


でも受けた恩は返さなきゃ、気持ちが悪いでしょ。


自分から危ないところに突っ込むなんてバカみたい。


……何度も諦めた人生は危ないことだらけ。


刺激がないと生きていけなくなってしまってるのかな、この身体は。



本当に心の底から好きだったよ奏子。



だから。

サヨナラしなきゃだね、ちゃんと。




後腐れなく終わらせるよ、関係を。










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