キミと、光さす方へ
「どうだよ、俺の絵は」


休憩時間になって勇人が自信満々にそう声をかけてきたときは泉と2人で声を出して笑った。


その時、久しぶりに笑った気がしてハッとしたんだっけ。


「ねぇ、聞いてる?」


泉の声に我に返った。


そうだった、ここは中庭だった。


あたしは膝の上のお弁当箱に視線を移した。


ぼーっとしていたけれどちゃんと食べていたようで、半分くらい減っている。


「勇人は誰にでも優しいから」


あたしの言葉に泉は呆れ顔だ。


「本当にそう思ってる? 誰がどう見ても、勇人は琴江を特別扱いだよ?」


「そんなことないよ」


あたしは苦笑いを浮かべて泉の言葉を否定した。


「なんでそんな風に思うの?」


泉の声が険しくなったので、あたしは視線を向けた。


声と同じように泉の目は少しだけつり上がっている。


本気で怒っているわけじゃなさそうだけど、なにか気に障ったみたいだ。
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