キミと、光さす方へ
「松本くん言ってたじゃん。噂は本当だって。それが絡んでるのかな?」


「わかんない……」


あたしは左右に首を振って答えた。


松本くんの席へ視線を向けると、彼はいつものようになにもせず、ジッとうつむいて座っている。


その姿を見ても、もう誰もなにも言わなくなっていた。


「どっちにしてもさ、本人がどうにかしようと思ってないんだから、あたしたちにはどうしようもないよね」


泉がそう言ってガムを口に放り込んだ。


爽やかなミントの香りがする。


「そうだね」


あたしは頷く。


今の状態で松本くんに手を貸せば、きっとイジメのターゲットが回ってくる。


そうするとひどく目立つことになる。


タダでさえあたしは一度田中くんたちに目を付けられているのだ。


これ以上松本くんに関わって、目立つのは避けたかった。


「あ、そういえば昨日のテレビでさぁ」


泉は何でも当たり前のように話題を変えた。


松本くんに関する話も、ちょっとした雑談のひとつでしかないのだと理解できた。


あたしは泉の言葉に相槌を打ち、笑顔を浮かべる。


でも、視界の端には松本くんの姿を映していた……。
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