キミと、光さす方へ
「ご、ごめん。話がしたくて来ちゃった」


そう言う声が震えている。


拒絶されたらきっとショックだろうなと思っていた。


松本くんは大きなため息を吐き出すと「話って?」と、聞いてきた。


「えっと、あの……」


つい、しどろもどろになってしまう。


学校で大丈夫なのかとか、聞くことは沢山あるはずなのに松本くんのけだるそうな表情を見ていると、言葉にならなくなってしまう。


ついにはその場にうつむいてしまった。


無言でうつむくなんて、余計に松本くんを困らせるだけだとわかっているのに……。


「話にくいことなら、部屋の中で聞くけど」


そう言って松本くんは部屋に上がるように促してくれた。


一瞬、戸惑う。


松本くんの部屋に上がり込んでしまって大丈夫だろうか。


仮にも男と女なんだし。


そう思って、次の瞬間には苦笑いを浮かべていた。


そんな浮ついたことになるはずがないと思いなおしたからだ。


今の松本くんの状況を知っているくせに、なにを考えているんだか。


「それじゃ、お邪魔します」


あたしは遠慮がちにそう言って部屋に入らせてもらった。
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