キミと、光さす方へ
どうして松本くんはそんなことをあたしに言うんだろう。


あたしはどんな返事をすればいいんだろう。


わからなくて、頭の中は真っ白になる。


松本くんがすぐ近くにいるから安易に動くこともできなかった。


「好きな子がいるって、伝えたんだ」


その言葉にまたドクンッと心臓が鳴った。


「へ、へぇ」


今度は声が裏返ってしまった。


それって誰?


そう聞いた方がいいんだろうか。


でも、聞けない。


気いたら全部が終わってしまいそうな気がしたから。


「その子と俺は、きっと両思いなんだ」


「な、なんでわかるの?」


「だって……仲村さんの頬がこんなに赤くなってるから」


そう言って松本くんはあたしの頬を優しく両手で包み込んだ。


スッと顔を上げさせられると、目の前に松本くんの顔がある。


松本くんの表情はとても優しくて全部を包み込んでくれそうに見えた。


そしてその頬が赤色に染まって見えるのは窓から差し込む夕陽のせいじゃないことを、あたしは理解した。


「え……」
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