キミと、光さす方へ
「なに言ってるの? 似てるわけないじゃん」


なぜか泉は怒った口調になっている。


あたしは怒られている理由がわからなくて首をかしげた。


もしも湖の上に立っていても誰からも注目されることがないのなら、あたしもその道を選んだだろう。


誰とも関わらず、誰とも笑い合わず。


ただただ学校の中で時間だけを消費していく。


その間あたしは好きなだけ過去を思い出すことができる。


過去に戻ることは苦痛を伴うことだけれど、戻れば戻るほどあたしは自分を満足させることができるから。


松本くんはあの状況で、それをやっているような気がしてならなかった。


「とにかくさ、変なことに首突っ込んじゃダメだよ」


泉が警戒した声を出す。


あたしは大きく頷いた。


「もちろんだよ」


そんなことをしたら、あたしも目立ってしまう。


隠れることができなくなってしまう。
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