キミと、光さす方へ
☆☆☆

「ねぇ、あれヤバイよねぇ」


ホームルームが終わり、泉が声をかけてきた。


「え?」


なんのことだろうと首をかしげると、泉がアゴで転校生の松本くんをさした。


見てみると松本くんは今日は1人で机に向かっていた。


昨日クラスメートがどれだけ話しかけても無視していたから、今日は誰も近づかなくなったみたいだ。


あたしはその様子に少しだけ胸が痛んだ。


全く誰からも話しかけられないのはさすがに辛いんじゃないかと思ってしまう。


それに、少しでもクラスに馴染んでおかないと松本くんは意図せずに目立ってしまうことになるのだ。


木を隠すには森が必要だ。


それなのに彼は1人で湖の上に立っているようなものだった。


「琴江、なに考えてるの?」


泉に言われて我に返った。


「なんか似てるなって思って」


「似てる?」


「うん。あたしと松本くんが」


その言葉に泉は目を見開いた。
< 37 / 302 >

この作品をシェア

pagetop