月夜に私は攫われる。
会話が終わって再びシーンとした、物音一つしない静かな空気が流れる。


.....なんか、ちょっとだけ気まずいな。


と思っていると。

司書さんが心配そうな目を私に向けた。


「ああ、そういえば時間。大丈夫?あと二分あるかないかだけど」

「えっ、マジですか」


図書室から二年生の教室までは普通に移動して約五分かかる。そこそこ広い敷地の学校だから仕方のないことだけど。

一年生の時は図書室に近かったので、二年生の移動の不便さに泣きそうになった。

一年生に戻りたい羨ましい!と心の中で叫ぶ。

けれど今は冗談抜きで時間が無いようなので叫んでいる場合じゃない。
全力ダッシュして二分ちょいくらいかな、と計算しながら急いでカウンターに置いた自分の筆記用具を回収した。


「今日の記録は私が付けとくから、早く戻って」


縋るような私の視線に司書さんはひらひらと手を振った。

そして神対応された私はありがとうございますっと頭を下げると、必死に教室まで続く廊下を走っていった。










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