俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
床を蹴って、花魁女郎蜘蛛もろともキッチンの方向を狙って自分の体を押し付けるように。
「…ぬぁっ!」
花魁女郎蜘蛛の不意の悲鳴と共に、私らは重なったままキッチンの方へと吹っ飛ぶ。
床に叩き付けると同時に、お互いごろごろと転がって離れていった。
勢いがあったから、床に打ち付けられた箇所が痛む。
だが、痛がっている場合ではなく、そんなものは堪えて上体を起こす。
「小癪な、人間め!」
花魁女郎蜘蛛も同時に上体を起こしていて…伶士の方にチラッと視線を置いた。
また、伶士に【傀儡】を仕掛けるつもりか?
…それは、させるか!
上体起こしかけの低い体勢で、再びヤツに向かって飛びかかる。
振り上げかけたヤツの右手に手を伸ばして、また身体ごと突っ込んで体当たり。
「…寄るでない!…邪魔だ!」
「それはさせるか!」
叫び声と共に、その右手を取る。
同時に、私の手からあの黒い炎が噴き出しては、ヤツの掌にチリチリと触れた。
これにはさすがのヤツも、目を見開いている。
「『黒炎』か?…貴様ぁぁっ!」
殺る気は十分だ。…この炎で。