俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
「………」
普段なら抵抗しそうなものなのに、なずなは何の反応もしなかった。
何も言わず、黙って俺に抱っこされている。
抵抗する力すらないのか。
俺に身を預けてくれるというこの場面、何も無ければ両手挙げて喜ぶ状況なのに…。
それに…その体重は前に抱き上げた時より遥かに軽すぎて、驚かされる。
一回り小さくなっているような気もして、壊れそうだ。
本当に、萎びている…。
「…家の中、入るぞ」
「………」
返事はないが、なずなを抱き上げたまま俺は靴を脱いで家の中にお邪魔する。
まさか、初めての御宅訪問がこんなカタチとは、誰が思ったか。
真っ正面のドアを開けると、そこは広めのリビングだった。
広めだし、物があまり無い印象でスッキリした部屋だ。
ここがなずなの部屋…というか、おじさんとなずなの住んでた家、か。
ふと目にしたのは、ブランケットがくしゃっと置いてあるソファー。
俺たちが来るまで、ここに座っていたのか。
「…ソファー、座る?」
抱き上げられていても顔を伏せたままのなずなに問う。
小さく頷いて「そこで寝てた」と呟いた。