俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~

そんな昔話を終えた親父は、何となく遠い目をしている。

まるで、あの頃を思い出しているような。

その姿を見ていると、何だか切なくなった。




【夢殿】の予知夢の力は、そんな悪いことばかりじゃない。

ただ、狙う者が、己の欲のために悪用しようとするから、悪いものになってしまっているだけだ。

叔父さんは、【夢殿】の今までの記憶を見なかったのか?

【夢殿】の周りは、涙や血ばかりじゃない。笑顔や感謝、恵みもあったのに。

…とは、思うけど。

ひょっとしたら俺も、もしあの時なずなが死んでいたとなれば、同じ事を考えたかもしれない。

人の感情は紙一重だ。



「兄貴も赤也もクソ真面目だったからな。クソ真面目カタブツ同士。……俺があの二人にふざけた事を言ってやりゃ良かったのかな、とは今更ながらに思う」

「え?親父、赤也さんに会ったことあるの」

「一度だけ、ちょっとな。兄貴に紹介されて。見た目も絵に書いたようなカタブツだ」

どんな人だったんだ。



そして親父は、俺の方をじっと見つめる。

< 521 / 541 >

この作品をシェア

pagetop