俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~

そう言い掛けて、思わず言葉を詰まらせてしまった。

親友が息子同然に大切にしていた子が、目を見開かせて笑う。

その表情は、まるで悪魔のようでーー。



「これで、何の足枷もなく、遠慮なくヤツと向き合うことが出来る…」



だが、それは一瞬で。

瞬きをすれば、剣軌の表情はいつもの涼しげな憎たらしい笑顔に戻っていた。

ほんの一瞬だけ幻覚を見たのか?だなんて錯覚に陥る。



「…社長、見ていて下さい。必ずや、あのクソヤローを破滅に追い込んでみせます。そして、我が師匠、優さんの無念を晴らしてみせます」




その静かに圧倒してくる勢いに、橘社長は何の言葉も思い浮かばなかった。




(お、おい…あのなぁ)




橘社長は、少なからずとも、25の若僧に対して不覚にも恐怖を感じてしまった。

しかしそれは、ただ恐ろしいだけの恐怖ではない。



息子同様に大切に接してきた彼が、どこかの得体の知れない悪いものに、奪われるかもしれない。

だなんていう、喪失の恐怖も無きにしも非ず。

< 540 / 541 >

この作品をシェア

pagetop