俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
そう言い掛けて、思わず言葉を詰まらせてしまった。
親友が息子同然に大切にしていた子が、目を見開かせて笑う。
その表情は、まるで悪魔のようでーー。
「これで、何の足枷もなく、遠慮なくヤツと向き合うことが出来る…」
だが、それは一瞬で。
瞬きをすれば、剣軌の表情はいつもの涼しげな憎たらしい笑顔に戻っていた。
ほんの一瞬だけ幻覚を見たのか?だなんて錯覚に陥る。
「…社長、見ていて下さい。必ずや、あのクソヤローを破滅に追い込んでみせます。そして、我が師匠、優さんの無念を晴らしてみせます」
その静かに圧倒してくる勢いに、橘社長は何の言葉も思い浮かばなかった。
(お、おい…あのなぁ)
橘社長は、少なからずとも、25の若僧に対して不覚にも恐怖を感じてしまった。
しかしそれは、ただ恐ろしいだけの恐怖ではない。
息子同様に大切に接してきた彼が、どこかの得体の知れない悪いものに、奪われるかもしれない。
だなんていう、喪失の恐怖も無きにしも非ず。