やさしいベッドで半分死にたい【完】

目の前に、差し出されて、慌てながら受け取った。

茶色のような、オレンジのような。オレンジに黒を混ぜたみたいな複雑な色をしている。何度か、それを外の公園で奪い合っている少年たちの姿を見ていた。

父や母や、そのほか大勢の私の周りの人たちは、その姿を見るたびに眉を顰めて「あの人たちに近寄ってはだめ」と私に教えてくれた。


「バスケットボール……」

「前に見てただろ」


いつのことだろう。振り返って、たしかに車の中から、高校生のような、制服を着た男女が公園でバスケットボールに興じているところを見つめていたことがあったような気がした。

やってみたいとつぶやいたかもしれない。

そのとき、花岡は何一つ言わずに、車を発進させた。できるはずがない。それをして指先に怪我を負ったら一大事だ。だから、誰一人私をその場に近づけようなどと思いもしなかった。

私にはその男女が自由の象徴のように見えていた。


「やってみたいって、あの時、もしかしてつぶやいていましたか」

「そうだな。……聞こえないふりして悪かった。ほら、やってみろ」


真顔のまま、目の前で私を見つめた。

簡潔な謝罪に泣き出したくなる。もうずっとこの調子だ。何か一つでもどこかのラインに触れるたびに泣きたくて、たまらなくなる。疲れてしまっているのだろうか。
< 27 / 215 >

この作品をシェア

pagetop