私しか、知らないで…

「亜南くん、亜南くん…」



「ん?」



「呼んだだけ…
アハハ…アハハハハ…」



「なに?」



「ん?
亜南くんて呼ぶと
子供探偵みたいな名前だな…って」



「よく言われる
だから、自分の名前、好きじゃない」



「亜南…
かっこいい名前じゃん
亜南!
好きだけどな…私
亜南!」



かっこいい…

好きだけどな…



名前がね



わかってる



「ねぇ、私のことも呼んでよ!」



「?
紫苑さん…」



「紫苑」



「?
紫苑、さん…」



「紫苑!」



「紫苑…?」



「うん!紫苑!」



「紫苑…」



「亜南

好きだよ」



名前がね



「うん…ありがと…」



「アハハハハ…
リアクション薄いね

もぉ1回呼んでよ」



「紫苑」



「よくできました!」



そう言って
オレの顔を両手で挟んだ



近い

また近いって…



「亜南」



「…ん?」



「紫苑、でしょ!」



「紫苑」



「よくできました」



彼女の両手で支配されて動けないオレに

彼女の唇がゆっくり触れた



ーーー



今度は頬じゃなくて唇に…



ゴクン…



唇が離れて

息と唾を飲み込んだ



オレの目の前で彼女の目がパッチリ開いた



「ご褒美」



彼女はそう言ってオレを抱きしめた



どうしたらいいかわからなくて硬直した



両手が離れて彼女が離れた



なんだった?

今の



ご褒美だって



犬か?オレ



「明日、行くね
行ってもいいの?」



「うん…」



頷くのが精一杯だった



なんでそんなに普通にしてられるの?

大人だから?



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