私しか、知らないで…

「別に、ホントに付き合ってもいんだけどね」



周りに人がいなくなって聞こえた

北翔の声



「え…」



耳を疑った



「毎日一緒に帰るついでに
付き合ってみる?
オレたち…」



冗談なのかな?

本気で返したら笑われちゃう?



「だって北翔
私のこと男友達みたいに思ってるよね?
北翔だけじゃなくて
他の男子もみんな私のこと…」



「かわいいって言ってるよ
花澤のこと、最近かわいくなったって
みんな言ってるよ

だから、なんか、焦る」



「え!
そんなこと…
みんな言ってない!
聞いたことない!」



「じゃあ、オレが1番?
…よかった」



「北翔、何言ってんの?」



「でも…
オマエが言ってほしい人は
オレじゃないもんな…」



「え…?」




「かわいいって言ってほしい人
他にいるもんな

悔しいけど
そいつの影響でかわいくなったんだろーし…」



言ってほしい人



「だから、かわいくないし…私」



「そーゆーところが、わかいくない!」



「ほら、やっぱりかわいくないんじゃん!」



「うん…
でも、好きだよ

花澤のこと、好きだよ

だから
付き合って…

花澤、オレの彼女になって…」



へ?

何を言ってるんだろう

この男は



「え…あの…
北翔、頭おかしくなった?」



なにかのドッキリとか?

前田たちがどこかで見てたり?



私はキョロキョロした



北翔の顔は真剣だった



だけど

北翔のこと

急にそんなふうに思えない



考えたことなかった



そんなふうに北翔が見てくれてたのも

知らなかった



「やっぱり、ダメか…
流れで言ってみたんだけど…

オレのこと男として見てないのは
花澤じゃない?

小学校からずっと一緒だったから
そんなふうに見れないのかもしれないけど…

見てよ
これからは男として意識してよ

ごめん…
明日からは一緒に帰れないかも
帰ったら、どんどん好きになるから…」



「うん…ごめんね…」



北翔の気持ちに応えられなかった



それから

友達でもなくなった



もぉ帰れないって言われた


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