私しか、知らないで…
「朝倉がもぉ花澤と帰れないって言ってきた
…
なんか、あった?」
次の日
先生に聞かれた
なんか…
「あった…」
「なに?
朝倉に彼女できたとか?」
先生は忙しそうに
パソコンに打ち込みながら
私に聞いた
「ブー…」
「じゃあ、逆?」
「え?」
「花澤、彼氏できた?」
先生、ホントに言ってる?
そんな重要なこと
先生にとっては重要でもないかもしれないけど
こんなタイミングでサラッと聞く?
「ブッブー…」
私に彼氏ができるとか
一大事だよ
「じゃあ、なに?
なんで、帰れないの?」
「先生に関係ない」
「関係あるだろ
朝倉が一緒に帰れないなら
オレがオマエのこと送らなきゃ…」
先生
面倒くさそう
「いーよ、もぉ…
大丈夫、ひとりで帰れる」
私のことなんて
いいよ
忙しいでしょ
先生
「花澤…
朝倉に告白された?」
ドキン…
ピンポン!
胸の中で同時に鳴った
「ん?…んー…違う…」
当てられて動揺した
先生がパソコンから私に視線を移した
久しぶりに先生と
まともに目が合った気がした
「もしかして、当たり?
…
ふたり、いい感じだと思うけどな…
…
付き合えばオレも安心だし…
朝倉がボディガードしてくれるじゃん」
先生はまたパソコンと向き合った
カチカチカチ…カチカチ…
先生
私のこと
迷惑だよね
担任だから
責任持って私のこと家に返さなきゃ
先生の負担になってる
私
なんかあったら
先生のせいになるから
北翔に私のこと押し付けようとしてる
先生の横顔が歪んだ
ここから見てる先生の横顔が好きだった
先生はいつも迷惑だったよね
私がここにいること
「失礼しました」
先生に背を向けて言った
先生の顔は見なかった
だって
先生も見てくれない