許す事ができるの?

···愛してる


どのくらい経っただろう

恵の瞳が開き
陽史が自分の手を包み込んで
デコにあてている姿を見て

「····ようじ····さん··」
と、口の中に違和感を感じながら
口にすると
陽史は、ハッとした顔をして
恵を見て、涙を流した。

その涙を恵は自分の手で
拭いてあげようとしたが
陽史に握られていて
出来なかった·····
それを
「陽ちゃん、泣き虫になったの?」
と、咲茉が拭いていた。
陽史は、
「ありがとう。」
と、咲茉に言うと
恵を見て
「LINE、ありがとう。
本当は、毎日楽しみにしていたんだ。
既読にならないようにするのが
大変だったけど。
だけど、本当にごめん。
返信しなくて。
女々しい男だと
笑ってくれていい
怒ってくれてもいい

本当の父親
本当のおばあさまに勝るものは
ないのだと思ってしまった。

それに恵の事だから
きっと咲茉ちゃんの気持ちを
中心に考えるだろうと
思って、なら、俺は邪魔しては
いけないと思ったんだ。

実は、あの日、四人が水島建設の社屋から
でてくるのを外で見ていたんだ。
とっても幸せそうでね。

恵の事を諦めようと
必死に仕事を入れたりね。

LINEに返事をしてしまうと
恵が気を遣うかもしれない
そんな苦しさを味あわせたくなかった
それに、返事をすると
恵や咲茉に会いたくなるから
必死で我慢していたんだ。

だけど、一人で勝手に考えて決めて
ごめん。
咲茉もパパに会えて嬉しいだろうから
邪魔しないように
必死だった。必死で我慢した。」
と、苦しそうに話してくれる。

陽史さんを起き上がり
思わず抱き締めて
「愛しています。
会えてなくて寂しかった。
ぐだぐだ、一人で悩んで
私こそ、ごめんなさい。
お義母さんに自分の心を
諦めないと行くなくなると
言われて、陽史さんを諦めたくないと、
思ったの。」
と、言うと
「律さん、お母さん、
そして、咲茉ちゃん。
私は、恵さんが好きです。
愛しています。
必ず幸せにします。
どうか、私に恵を任せて貰えませんか?」
と、私を抱き締めながら三人に
頭を下げた。

お義母さんは、
「どうか、恵ちゃんを
幸せにして上げて下さい。
家の息子が出来なかった分も。」
と、言ってくれた。
陽史は、お義母さんに頭を下げた。

咲茉は、
「私は、パパが二人だ。
スッゴい!!」
と、喜んでいた。

律は、難しい顔をしていたが
はぁーっと、ため息をついて
「上杉さんには、敵わない。
俺は、ぼちぼち攻めようと
思っていたのに。
恵と咲茉を宜しくお願いします。
ただ、咲茉とはあっても
よいですか?」
と、言うと
「咲茉の気持ちを尊重します。」
と、陽史が答えると
「パパに、お嫁さんができるまでね?」
と、咲茉が言い
皆で笑ってしまった。

この日、陽史は、恵の体を
心配して恵達のマンションに泊まる
事にした。

陽史は、由紀子と律を
外まで見送り
「ありがとうございました。」
と、二人に頭を下げた。

律が、どれ程の気持ちで
恵を諦めたのかと
思うとたまらなかったのだ。

それは、律にもわかり
律は、やはり勝てないと
改めて思った。
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