Xmas eve in2020
吉田マネ-ジャ-が休憩から戻って来て、私は今度は、とりあえず作業に専念。天麩羅をあげる。


「明日香が作ったお惣菜で、お金取れるの?」


学生時代は、実家に居て、母に甘えて、全く料理をしなかった私は、配属が決まった時、そうからかわれたけど、バカにしないでよってとこかな。ま、随分しごかれたけどね・・・。


4時になった。ウチのス-パ-では、ここから2時間が売り込みタイムとされていて、最低限の作業人員を残して、従業員は売場で声出し、売り込みに入る。


売場にはお客様が増えて来た。お子様連れが、普段より目立つ。ロ-ストチキンやオードブル、お寿司、それに私達の部門の管轄じゃないけど、お菓子や飲料を一緒に選んでいる。


平成時代は、12月23日のいわゆる「クリスマスイヴイヴ」が祝日で、土日と絡んで連休になったりして、大きな盛り上がりがあったみたいだけど、私が就職した令和では、その祝日はなくなり、まして今年のイヴは週末にもかからない、ど平日。


本来なら与件としては、苦しいのだが、しかし今年は、例のウイルス騒動で様相が一変。寒さが厳しくなるにつれて、感染者は第3波とも言われる増加一途の状況で、人々が外食や会食を控え、「内食需要」が高まることが、十分に予測できた。言い方は悪いが、私達ス-パ-にとってはチャンス拡大という状況なのだ。


私は、声出しをしながら、売場の動向に目を凝らしていると


「明日香。」


と声が掛かった。


「あ、隼人さん。おはようございます。」


隼人先輩の姿に、私は笑顔で挨拶する。


「だいぶ入って来たな、お客さん。」


「はい。」


「4時の数字もいい。朝から握りっぱなしだったから、売場も満タン。あとは売り込むだけだ。」


そう言って、隼人さんは笑う。隼人さんはお寿司の担当。彼の握るお寿司は、見た目も鮮やかで回らない寿司屋さんのそれにも引けを取らないと、お客さんからの評判もいい。


「そう言えば、俺のオ-ドブル、ちゃんとカウンタ-に置いといてくれよ。帰りに持って帰るから。」


「大丈夫です。仕事上がる前に、松井さんが心を込めて作るからって、張り切ってました。」


私と違って、朝から出勤の隼人さんは、上がりの時間が近付いている。


「今日は帰ったら、彼女さんと2人きりのパ-ティですか?」


ちょっといたずらっぽく聞いてみると


「ああ、珍しくあいつも今日は早番だからな。」


と照れ臭そうに答える。


「羨ましい限りです。じゃぁ私、休憩に入ります。」


「おぅ。」


売場で隼人さん-明日香なんて呼び合い、同じ苗字の名札を下げていると、時にお客さんに誤解される。実は私は旧字の「斎藤」、隼人さんは「斉藤」で違うんだけど、お客さんはそんな細かいところなんか見ないからね。


私は隼人さんに後をお願いして、休憩に入ることにした。
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