SP警護と強気な華【完】
この気弱な男が
独断で女の命を狙うとは思ってもいないし
昨日カトレアが会ったという人物の仕業だという事は、容易に考えられたからだ。
「ぼ、僕は悪くない!
冬月さんを捕まえれば人気者になれるって言うからッ」
「はあ?なんだよ人気者って。
そんなくだらねぇ理由でナイフを持ち出したのかよ」
逃げられないと悟った男は観念したのか
抵抗を止め素直に答えるが
あまりの低レベルな発言に柊は呆れてしまった。
そもそも”捕まえる”=”人気者”なワケがない。
「まぁでも、望みが叶って良かったじゃねーか。
今お前はここにいるヤツらから注目を浴びているんだ。
人気者以上に有名人になったな」
嫌味の1つも言いながら
男が手にしていたナイフを取り上げ
自身のスーツのポケットに入れると
男の両手首を後ろで束ねるように掴んだ。
しゅん…と大人しくなる男に
柊はもう1度質問した。
「誰に頼まれてこんな事をした。
黒幕がいるんだろ。
さっさと吐け」
すると彼は小さく答えた。
「…シオンさん」