翡翠の森
「それより」
ぐっと引き寄せられた拍子に、頭が彼の肩に当たりコツンと音を立てた。
「添い寝してほしいけど、他の目もあるから。……そうしててよ。朝早かったし、君も疲れたでしょ」
気がつけば、張り詰めていたものが解れ、別の意味で胸が鳴って仕方ない。
「……うん」
素直に頷くと、軽く唇が落とされた。
他の目とやらを、言うほど気にするつもりはないようだ。
(やっぱり、ありがとう。ロイ)
嘘っぽい、彼の欠伸。
大袈裟な仕草に笑ったくせに、不思議と伝染して眠くなる。
コトコトと、車の揺れも心地いい。
規則正しすぎる、ロイの呼吸。
肩に回された腕。
この肌寒い空気さえ、ちょうどいいと錯覚するほどに。
「ロイ……」
(あ……!! )
うとうと微睡む途中、無意識に呼んでしまって意識が引き戻される。
以前も似たことがあったが、今回は彼がすぐそこにいる。
おまけに絶対に彼は起きていて、ジェイダの寝言を聞いたはずである。案の定、彼の目が開いた気配がした。
(寝てます! 私は寝てますから! )
必死で狸寝入りをしていると、クスクスと笑われてしまう。
「……おやすみ。いい夢を、ジェイダ」
(それ……前も言ってくれたな)
既に懐かしいと感じる。
まるで呪文を唱えられたように、ジェイダはストンと夢へと落ちていった。