翡翠の森
「ようこそ、アルバート」
門を潜った先で聞こえた声に、反射的にビクッとした。
「や、キャシディ。約束守ってくれて、ありがとう」
そんなジェイダを安心させるように、ロイが繋いだ手に力を加える。
「礼なら、そこの乙女に言うんだな。随分と進展したようだが、よもやもう違ったりするのか」
「言っただろ。彼女は僕の大切な人だと」
不躾すぎる問いに顔が引きつったが、ロイが表情を変えないのを見て、いくらか落ち着いてくる。
(いちいち、反応していたら駄目だわ)
怖がるのも、過敏に反応するのも良くない。
動揺していては、万一騙されていても見抜けない。
それでも、そんなことはないと信じないといけないのだけれど。
ジェイダは深呼吸し、前を向いた。
いがみ合っていても、誇りはあるはず。
この国が好きなのだ。
強めの太陽だって、好き。
だから、彼らと分かち合えるのだと信じていたい。
「慣れない環境は堪えるだろう。中で休むといい」
問いかけに対する答えがないことに、それほど興味はないらしく、キャシディは案内を続けてくれた。
「お父上はどうなさっている? 」
「お二人の到着を楽しみにしている。だが、皆様には少々辛い陽気だろう? 休憩されてからでも構わない」
「つまり、もういらしてるんだね? それなら、お待たせする訳にいかない。ジェイダは平気? 」
頷いたものの、ロイは大丈夫だろうか。
キャシディの言う通り、休んでもいい気はしたが、彼は微笑むだけだ。