翡翠の森
原因



・・・



枝葉の隙間から、丁度いいくらいの光が注がれている。
耳を澄ませば、鳥の鳴き声。

ここはどこだろう。

暑すぎず、寒すぎず。

クルル・トスティータの両方の国民が、最適だと思える温度。


『禁断の森なんて…誰が言い出したんだ』


男が忌々しいと吐き捨てた。

ああ、ここはあの森だ。
禁断の森――二つの国の境界線。


『動物だって、それぞれの国から、救いを求めてやって来る。そして、仲良くしているっていうのに』


彼の文句は止まらない。
言われてみれば、あの森に生息している動物達は、どちらの出身でもあり得る。

一方は、日除けを求めて。
もう一方は、温もりを求めて。
そうだとしても、何ら不思議ではない。
そしてきっと、仲良く暮らしているのだろう。


『国境付近で睨み合ったって、何になる。せっかく言葉は同じなんだから、話してみればいいんだ』


(そうよ。本当にそうなの)


心の中で同意していると、彼はこちらをまじまじと見つめた。


『あ……』


だが、彼が見ていたのはジェイダではなかった。
つられて振り向くと、そこで金色の髪が揺れていた。


『待って! 』


日に焼けた腕を伸ばし、男は慌てて影を追った。

< 58 / 323 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop