翡翠の森
年頃のジェイダとしては、それだけでも十分恥ずかしい。
一方ロイは全く気にならない様子で、最後のひとつまで留めてしまった。
「おっと、忘れてた」
わざとらしく言うと、突然ジェイダの太腿辺りにあるポケットを弄り始めた。
「ちょ……っ!? 」
いきなり何をしているのか。
乙女の羞恥どころの話ではない。
「じっとしてて」
慌てて身をよじったが、さらっと腰を押さえられてしまう。
「そんなこと言われても! 」
少し離れたところで、アルフレッドが呆れたようにこちらを見ている。
(助けてくれてもいいのに! っていうか、何なの~~!? )
「いたいた。大人しいと思ったら寝てたのか、こいつ」
叫ぶ寸前で、ポケットから取りだされたのは。
「あ!! 」
あまりのことにすっかり忘れていたが、それはジェイダを二人の許に誘った、あの子リスだった。
「ジェイダと会わせてくれたから、ご褒美をあげようと思ったのに」
ロイの言葉が分かったように、小リスの目がパッチリと開く。
「ロイのペットだったの? 」
「まあね。と言うより、相棒に近いかな。ったく、ほら」
ゴソゴソと荷物をあさると、出てきたのは高級そうな可愛い包みに入った……。
「……マシュマロ? 」
「こいつ、木の実とか硬い物苦手なんだよね。中でもマシュマロが大好物」
確かに、美味しそうにモグモグと頬張ってはいるが。
(……大丈夫なのかな)
「大丈夫、大丈夫。ちゃんとした食事もさせてるから」
そうは言うけれど、信じられない。
じっとリスを見ていると、不思議そうに小首を傾げてジェイダに飛びついた。
「マロはジェイダの方がいいって。預けてもいいかな」
「それはもちろん。……マロ……」
ネーミングセンスを疑っていると、盛大な溜息が聞こえた。
「……はあ。行くぞ、ロイ」
「はいはい。いい夢を、ジェイダ」
部屋に入ると、すぐにベッドに身を投げ出した。
豪華ではないが、眠り心地がよさそうだ。
「マロの相棒は、変わってるね」
胸に上って来たマロを撫でると、同意だというようにすり寄って来る。
「おやすみ、マロ」
疲れた。
そう思ったとたん、強烈な眠気が襲う。
(これから、どうなるんだろう)
余計なことを考えるなというように、睡魔はより深い眠りへと誘うのだった。