ささやきはピーカンにこだまして
「小松ね。ひとをうらやましがってる場合なの? あんたまだひとりも勧誘できてないじゃないの。結城キャプテンの恩に報いなさいよ」
「そんなこと言ったってぇ……」
 ひとを上目づかいに見るな。気持ち悪い。
「八木だって……、ほら、まだたったの3人じゃない」
 こら。勝手にマル秘名簿をのぞくんじゃない。
(じょ)バドのことはいいの。武田が足を折っちゃって、2年の男子はあんただけなんだから。あんたがしっかりしなきゃ、どうしようもないんだよ?」
「わかってるよ」
「…………」
 だから。
 そうやって、イジイジとうつむくのもやめなさい。


「はーい、メーメ。どう? 調子は」
「どうだ、小松?」
 ガタガタタ
 その声に椅子が飛んで、机が曲がったのは、わたしと小松が同時にビシッと立ち上がったから。
「美香キャプテン。結城(ゆうき)キャプテン。お疲れ様でっす」
 さらにビシビシっと、太腿(ふともも)に手を当てて60度、礼!
「お、八木。…もう3人か、やるねぇ、おまえは」
「そ…んなこと、ないですぅ」
 きゃー。
 今日の結城先輩、ステキだぁ。
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