ささやきはピーカンにこだまして
「ねぇ、今日、このあとのヘアピン練習、なしにしようか」
「えっ?」
 (じゅん)は軟テでダブルスには慣れているせいか、早い展開のヘアピンは得意で。
 はっきり言って、もう、わたしじゃ練習相手にならないし。
 考えてみたらジュニアチャンプにまでなるような子が、ラケットの握りの違和感をぬぐいさってしまえれば、タマのコントロールがうまいのはあたりまえ。
 驚くべき順応力で、もうバドミントンのタマ筋にも慣れたようだし。
 気がつかなかったわたしが、ばかだった。

「ボディーショットって知ってるよね」
 シングルスでは、いかに相手をコートのうしろに下げるかがとても大事。
 ところが相手だってこちらを下げてネットにつきたいわけで。
 準みたいな初心者が、ヘアピン、カット、ドロップ。
 ネットショット自由自在の上級者に対抗する方法はひとつ。
 それはもちろん、拾って拾って拾いまくること。
 だけどもうひとつ、上級者にも高度な技術だから、あえて教えない方法もある。
「ボディーショットですか……?」
 ほーら、やっぱり。
 今さらなにをっていう顔をしてる。
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