ささやきはピーカンにこだまして
「リビングに行ったの…かな?」
 本当に、どうなってるの?
 いっしょに練習はしていたのかもしれないけど。
 なんだって、家に来るのよ。
「もう11時だよ。非常識ぃ……」
 だいたい、ふつうはもう寝てる時間じゃ――…。
「あっ!」
 大変! ママ!
 いやぁぁぁぁ。
 あのひと、いつも超ミニのバスローブ1枚でお風呂から出てくるのよ。
「やめてぇぇ!」
 だめ、だめ。

 階段を駆けおりて。
 やっぱりリビングにいた二紀(にき)(じゅん)をちら見しながら廊下を猛ダッシュ。
「ママ!」
 お風呂場に続く洗面所のドアを開けると、母さんはばっちりメイクで、ブローした髪を合わせ鏡で見ていた。
「まぁやだ。あなた、まさかそのかっこうで、お客様の前を走ってきたんじゃないでしょうね」
 うっ。
 ひとの心配をしている場合じゃなかった。
 わたしもパジャマ代わりのヨレヨレ半袖Tシャツと短パン。
 しかも……
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