ささやきはピーカンにこだまして
「それにさ。思うに……」
 思うに?
「ヒーローって、案外もてないと思うな。近寄りがたいじゃん」
「…ふ、うーん」
 まさか弟とこんなことを話すとは思わなかったけど。
 二紀(にき)も男の子…なんだし……。
「二紀は? 二紀はなんでじゅ…実取くんと、友だちになりたかったの?」
「ヒーローだったからに、決まってるでしょ」
 えぇぇぇぇぇ?
「ぼくより目立つとか、許しがたいじゃんか」
「なんだそれは」
 あきれてしまうけど。
 本心だろうな、とも思うけど。
 それがすべてじゃないのは、今のふたりを見ていればわかるし。
「姉ちゃんは? 姉ちゃんだって好きでしょ、ヒーロー」
「…………」
 それは、あこがれはするけど――。
「けど、本気なら。本気で好きなら……、相手がヒーローとか……。考えなく…ない?」
「本気ってなに?」
「…………っ」
 二紀はアレイを握った手をぐいぐいと肘から曲げながら、力こぶの具合を確かめている。
 もの思いにふけりながら、わたしの手はしっかり二紀の動作の補正をしていた。
「あ、そうか。手首の強化だったね。――こう?」
「そう……」
「…………」
「…………」
 くいくいと手首を曲げてみせる二紀にうなずいて、またぼんやりと考えてしまう、準のこと。
< 128 / 200 >

この作品をシェア

pagetop