ささやきはピーカンにこだまして
「えらいな……。強いな……って、思ってた」
「…………」
「きみを残していかれるご両親も。きみも……」
「…………」
「…………」
 本当だよ。
 お母さんたちを責めてない。
 きみが守ろうとした家族を、わたしがひどいひとたちだなんて思うわけがない。
 わかるでしょ?
 言葉にできればどんなにいいか。
 でもわたしの言葉はきみを怒らせてしまうばかりだから、こわいの。
 (じゅん)がうつむいて、わたしの足元のトートバッグを指す。
「それ、二紀(にき)からだよね。電話で聞いた」
「あ、うん。受け取ってやってね。こっちは――、あの、ビタミンCがいいかなと思って。フルーツも持ってきたよ」
 テーブルにバスケットをのせると、準が礼儀正しく「ありがとうございます」と頭を下げるから。
「どういたしまして」って。
 ふたりでかしこまって。
 それがおかしかったのか、また笑う。
 今度の笑顔はまっすぐに見ていられた。
 心から笑ってくれるときの準は、かわいいなと思う。
「――かわいいね」
 …ぇ。
 思っていたことを言葉にされて。
 一瞬戸惑ったけど、すぐ、バスケットのことだと気づいてうなずいた。
「うん。なにか食べられる? むいてあげるよ」
 少しくらい心配させてちょうだいね。
 今だけね。
 お店のおばさんがしてくれたラッピングに手を伸ばすと、準が首を振った。
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