ささやきはピーカンにこだまして
 怒って帰ると思ったのにな。
「だめだよ。さっさと練習にもどりなさい」
「ヘー。メニューできたの?」
 (じゅん)は、もぞもぞ熱いベンチと折り合いをつけながら、でも、立つ気はなさそう。
 困ったな。
「そのうちできる!」
 それはちょっと…うそかな…と思いつつ、断言するのは自分にだ。
 がんばれ八木(やぎ)キャプテン。
「そお? だったら、ぼくは必要なかったかな?」
「あっ」
 そうだよ、準がいたんだ。
 計画作りの天才!
「ん? 今、すっごくうれしそうな顔したな。これは……お返しが期待できるかな?」
「で…きない、できない」
 こういう準は、アブナイんだから。
 つけあがらせちゃダメだ。
「ちぇっ…。じゃ、ペン貸して」
 肩をすくめながら、それでも準は、さらさらリポート用紙を埋めていく。
「え……それはキツイよ」
「だめでしょ。このくらい、こなせなきゃ」
「ええ。それ、マジ?」
「あなたが率先して立ち上がれば、問題ない」
 そこが問題だと思うんですけど。
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