ささやきはピーカンにこだまして
「ぼくは……ずっと、あなたが、好きだった」
 わたしの…ハンカチ。
「いつ気づいてくれるか――。ずっと待ってたんだよ?」
 だめっ。
「ふたつ年上でも、みっつ年上でも、もしもう一度出会えたら、絶対、ぼくを好きにさせて……。負けないくらいオトナになってみせるって…思ってたんだ」
 だめっ。
「でも……あなたはどんどん先輩の顔になっちゃうし」
 わたし、泣きます。
「ぼくはぼくで……、自分がこんなになさけないやつだと、思わなかった」

 涙は静かにあふれてきた。
 頬を伝って、あごに止まって。
 乾いた地面に――――ぽたり。

「どうしたの?」
 準は、ベンチをひっくりかえして立ち上がった。
 太陽に照らされて乾いた地面は、わたしのスニーカーの前だけ、雨が降っている。
「泣かないで。どうしたの? ぼくのせい?」
 ううん。ううん。
 わたしはただ、首を振ることしかできなくて。
 涙が止まらないの、(じゅん)
「すぐオトナになるよ。もう泣かさない。お願いだから! ――泣かないで」
 ちがう。
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