ささやきはピーカンにこだまして
「お昼ごはんは? 食べ終わってるのならアリーナに行きましょう。こういう不愉快なことは、さっさと終わらせるにかぎるわ」
 これで泣いてみせずにすんだぁ。
 しかも試合会場にまで連れこめる部員をふたり確保。
「行くわよ、ボーヤ」
 さっさと廊下を歩きだしたわたしの横に、すっと並んでくる実取(みどり)は、並んでみると結城先輩より背が高い。
 な、ま、い、き。
「そうそう、お姉さん。たったひとつ年上なくらいで、ひとを坊や扱いするの、やめてくださいよ。不愉快だ」
「…………」
「…………」
 にらみあいながらスタスタと廊下を進むわたしたちのうしろが、突然がやがやと騒がしくなった。
 ギャラリーの感想戦が始まったらしい。

 やだジュン…、なにジュン? ニッキーちょっと…

 人気者だねぇ。
 まぁ、明日にはもっと有名にしてあげるわよ。
 女に負けてバド部に入った元チャンプと元ナンパ師として。

 体育館シューズに履き替えるために1年生の生徒玄関に向かった実取のうしろ姿を見て、結城先輩がため息をついた。
「びっくりしたぁ。あまり、いじめてやるなよ、八木(やぎ)
「わかってますよう」
 ところで先輩。
「だれか張り替えまえのラケット、持ってませんかね?」
「――――鬼」
 はい。

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