ささやきはピーカンにこだまして
「そういう気持ちでテニスに励めば、硬テでも、きっと活躍できるよ。がんばってね」
 にっこリ。
 いやー、わたしっておとなだわ。
「あなたにそんなこと、言われたくない!」
 はぁあ?
 なんですってぇ。
「結城先輩の大きな愛情がわかんないの? あんたって子は」
「そんな余裕ないくせに。知ってますよ。朝から四條畷たちが大騒ぎしてたからね。試合に出られなくなりそうだから、あせってるんでしょ?」
 うっ。
「ぼく……ほしくないんですか? 入部してもいいって言ってるのに。虚勢はっちゃって」
「だれがあんたなんかっ」
 わたしと実取(みどり)がバチバチにらみあっていると、息がもれたような小さな笑い声。
「すごい自信だけど――。きみもおれが頼んだ幽霊部員も、バドミントンに関しては変わらないんだよ。シロートはシロート。まぁ、カンとか運動神経とか……、若干きみのほうがましって程度で」
 すごい。
 さすが結城先輩。
 ここね。
 ここでキビシク出て、ボーヤを黙らせるのね。
 さすがキャプテン。
 勉強になりました。
「若干まし…って……」
 ショックを受けたのは二紀(にき)のほうで。
 よろめいて、うなだれた。
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